カラスのIQはどれくらいなのか、人間でいうと何歳くらいの賢さなのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。ゴミ袋を器用に開けたり、こちらの顔をじっと見ていたりする姿に、「ただの鳥ではない」と感じた人もいるかもしれません。
この記事では、カラスの賢さがどこまで研究で確かめられているのかを、学術論文などの出典をたどって解説します。
カラスのIQはどれくらい?人間の何歳並みかを先に解説

結論から整理すると、カラスに人間と同じIQの数値を当てはめることはできません。ただし複数の研究で、カラスのなかまは人間の幼児から小学校低学年に匹敵する問題解決能力を示すと報告されています。
鳥類のなかではトップクラスで、道具を使うチンパンジーなどの類人猿に並ぶとする研究もあります。「鳥界の天才」と呼ばれるのは、こうした研究の積み重ねがあるからです。
なお、ネットでよく見る「IQ70〜90」「人間の7歳児並み」といった数値は出典をたどれないものが多く、そのまま受け取るのは禁物です。この点は記事の後半であらためて検証します。
まずは、カラスの賢さを示す代表的な能力を整理しておきます。いずれも査読を経た研究で確かめられているものです。
- 道具の製作:枝や針金を、エサを取り出しやすい形に自分で作り変える
- 顔の記憶:危険を感じた人の顔を覚え、年単位で見分ける
- 因果の理解:水位を上げれば届く、という仕組みを読んで行動する
- 先を見すえる計画:あとで使う道具を選び、その時まで自分を抑える
ここからは、これらの賢さを研究の裏づけとともに順にみていきます。IQという数値そのものの意味は、人間の平均をまとめた記事もあわせてご覧ください。
道具を作り、改良するカラスの賢さ

カラスの知能を象徴するのが、道具を自分で作って使う行動です。とくに南太平洋のニューカレドニアにすむカレドニアガラスは、道具を使う鳥としてよく知られています。
野生のカレドニアガラスは、小枝の先をかぎ針のような形に整えて、木の穴にひそむ虫やその幼虫を引き出して食べます。この行動は1996年に学術誌『ネイチャー』で報告されました。
針金を曲げて道具を作った「ベティ」
カラスの賢さを世界に知らしめたのが、「ベティ」と名づけられたメスのカレドニアガラスです。2002年に学術誌『サイエンス』で報告されました。
ベティは、まっすぐな針金を自分でくちばしを使って曲げ、かぎ状のフックを作りました。そのフックで、筒の底にあるエサ入りの小さなバケツを引き上げたのです。
これは、動物が目的のために物をわざわざ作り変えて道具にした、最初の報告のひとつとされています。手本を見せられたわけでもなく、その場で材料を加工した点に研究者は驚きました。
部品を組み合わせて長い道具も作る
その後の研究では、カレドニアガラスが複数の部品を組み合わせて1本の長い道具を作ることも確認されています。短い棒だけでは届かないエサを、棒どうしをつないで取り出したのです。
こうした「部品を合体させる」道具作りは、これまで人間や一部の類人猿でしか知られていなかった高度な行動です。訓練なしでやってのけた点が注目されました。
道具を作り、さらに改良する力という意味では、カラスは道具の名手として知られるチンパンジーとよく比べられます。類人猿との比較は、別の記事でくわしく検証しています。
関連記事:チンパンジーのIQは人間より上?人間との比較を研究で検証
人の顔を覚え、何年も見分けるカラスの記憶力

「カラスは人の顔を覚える」という話は、研究でも裏づけられています。アメリカのワシントン大学のチームが行った実験が、よく知られています。
研究者は特定のお面をつけて野生のカラスを捕獲し、しばらくして放しました。すると、その後に同じお面をつけた人が現れると、カラスは警戒の声を上げて騒いだのです。
この警戒は一度きりではなく、数年たっても続いたと報告されています。一度こわい思いをさせた相手の顔を、長く記憶していたわけです。
さらに興味深いのは、捕獲の場面を見ていない仲間のカラスまで警戒した点です。危険な相手の情報が、群れのなかで共有されていたと考えられています。
個体を見分け、その情報を仲間と分かち合う力は、高い社会的な知能のあらわれです。人の顔を見分ける能力は、海のなかでは賢さで知られるタコにも報告されています。
関連記事:タコのIQはいくつ?人間より高い?海の天才の賢さを解説
水位を読み、先を見すえるカラスの思考力

カラスの賢さは、道具や記憶だけにとどまりません。目に見えない仕組みを読み取り、先のことを考えて行動する力も確かめられています。
水位を上げてエサを取る「イソップ寓話」の課題
有名なのが、イソップ寓話の「カラスと水差し」になぞらえた実験です。水の入った筒に石を落として水位を上げ、浮いているエサを引き寄せられるかを調べました。
カレドニアガラスは、水の入った筒を選んで石を入れ、水に沈む石・中身の詰まった物を正しく選んで水位を上げました。研究チームは、この成績を5〜7歳の子どもに相当する理解力と評価しています。2014年の研究です。
「物を入れると水位が上がる」という原因と結果の関係を読んで動いており、ただの偶然や慣れではないと考えられています。
あとで使う道具を選ぶ「計画する力」
近い仲間のワタリガラスでは、さらに高度な「先を見越して計画する力」が報告されています。2017年に『サイエンス』で発表された研究です。
実験では、すぐにはエサがもらえない場面で、あとで役立つ道具をあらかじめ選んで取っておく行動が確認されました。目の前の小さな誘惑をがまんして、将来の大きな利益を選んだのです。
この自制心は、研究のなかで4歳の子どもを上回る場面もあったとされています。先を見すえて計画する力は、これまで主に人間や類人猿で知られてきた能力でした。
こうした能力をどう数値で測るのか、そもそもIQはどうやって決まるのかは、測り方の記事でくわしく解説しています。
関連記事:IQの測り方|どうやって数値が決まる?計算方法と測定の種類を解説
「カラスのIQは70〜90」は本当?数値の正しい受け取り方

ネットでよく見る「カラスのIQは70〜90」「人間の7歳児並み」といった数値は、出典が確認できないイメージ値が多く見られます。
そもそもIQは、人間の集団のなかで自分がどの位置にいるかを表す数値です。種をまたいで比べる前提では作られておらず、「カラスのIQは○○」と数字で言い切ることはできません。
「7歳児並み」という表現も、特定の課題での比較から生まれたものです。水位を読む課題で子どもと近い成績を出したからといって、知能の全体が7歳児と同じというわけではありません。
数値そのものより、どんな能力が研究で確かめられているかを見るほうが、カラスの実像に近づけます。生き物のIQをめぐる俗説は、サボテンの例でもくわしく検証しています。
関連記事:サボテンのIQは2〜3って本当?論文・出典から検証して解説
なぜ鳥なのに、ここまで賢いのか
「鳥の脳は小さいのに、なぜそんなに賢いのか」と不思議に思うかもしれません。その答えのひとつが、脳の神経細胞のつまり方にあります。
2016年の研究によると、カラスのなかまやオウムの脳は、同じ重さの霊長類の脳に匹敵する数の神経細胞を、前脳という部分にぎっしり詰め込んでいます。小さくても高密度なのです。
つまりカラスは、小さな脳に高い処理能力を凝縮した生き物だといえます。「鳥界の天才」という呼び名は、こうした脳のつくりにも支えられています。
カラスの賢さと比べると、自分のIQの位置も気になってくるかもしれません。じっくり測りたい方は無料の本格版IQテストを、まずは手軽に試したい方は下のボタンからどうぞ。
カラスの知能についてよくある質問
- カラスは鏡に映った自分を、自分だとわかりますか?
-
近い仲間のカササギでは、鏡を使って自分の体についた印に気づいたとする報告があります。鏡像自己認識と呼ばれる能力です。
ただしカラス全般で確実に当てはまるかは、研究者の間でも議論が続いています。現時点では「可能性が示されている段階」と受け取るのが正確です。
まとめ
カラスのIQを人間と同じ数値で言い切ることはできませんが、道具を作り、人の顔を覚え、先を見すえて計画するなど、鳥とは思えない高い知能が研究で確かめられています。
- 針金を曲げてフックを作る道具の製作・改良が学術誌で報告されている
- 危険な相手の顔を年単位で記憶し、仲間にも情報を伝える
- 水位を読む課題で5〜7歳児に相当、将来を見越す計画力も確認
- 「IQ70〜90」は出典不明の俗説。脳は小さくても神経細胞が高密度
知能は、ひとつのものさしで上下を決められるものではありません。カラスの賢さに驚いたあとは、自分のIQの位置も気軽に確かめてみてください。
カラスの道具製作は Weir, Chappell & Kacelnik (2002)「Shaping of hooks in New Caledonian crows」Science 297(5583)(DOI)、水位課題の理解は Jelbert ら (2014)「Using the Aesop’s Fable Paradigm to Investigate Causal Understanding of Water Displacement by New Caledonian Crows」PLOS ONE 9(3)(DOI)、将来の計画は Kabadayi & Osvath (2017)「Ravens parallel great apes in flexible planning for tool-use and bartering」Science 357(6347)(DOI)、人の顔の記憶は Marzluff ら (2011) のワシントン大学の研究、脳の神経細胞数は Olkowicz ら (2016)「Birds have primate-like numbers of neurons in the forebrain」PNAS 113(26)(DOI)を参照しました。IQが人間の認知能力を数値化した指標であることは東京大学の知能指数に関する解説ページを参照しています。動物の知能は研究段階のものであり、IQという数値で種を超えて順位づけできるものではありません。

