タコのIQはいくつなのか、人間より高いのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。「IQ40〜50」「犬や猫並み」といった話を見かけた人もいるかもしれません。
この記事では、ココナッツの殻を道具に使う研究でわかった賢さから、巷で言われる数値の見方までを、出典をたどって解説します。
タコのIQはどれほど高いのか

タコは無脊椎動物のなかで最も賢いとされる生き物です。道具を使い、瓶のフタを開け、水槽から脱走することさえ報告されています。
神経細胞の数はおよそ5億個とされ、これは犬とほぼ同じ規模です。貝やエビのなかまと同じ無脊椎動物でありながら、けたはずれの知能を持っています。
ただしIQは、人間の集団のなかで自分がどの位置にいるかを表す数値です。種をまたいで比べる前提では作られておらず、「人間よりIQが上か」を数字で出すことはできません。
それでも能力ごとに見ていくと、人間に迫る、あるいは驚かされる場面があるのが実態です。タコの賢さを示す代表的な行動を整理すると、次のようになります。
- 道具の使用:ココナッツの殻を運び、身を守る「よろい」として使う
- 問題解決:ねじ式の瓶のフタを回して開け、中のエサを取り出す
- 脱走:水槽のすき間を見つけ、排水管を通って海へ逃げた例がある
- 個体識別・擬態:人の顔を見分け、体の色や質感を一瞬で変える
ここからは、これらの賢さを研究の裏づけとともに順にみていきます。なお、IQという数値そのものの意味は、平均IQをまとめた記事もあわせてご覧ください。
タコのIQは40〜50って本当?ランキングの数値の見方

ネットでよく見る「タコのIQは40〜50」「犬や猫並み」「人間でいうと何歳」といった数値は、出典が確認できないイメージ値が多く見られます。
そもそもIQは人間用の指標で、動物にそのまま当てはめる前提で作られていません。「IQ40〜50」も正式な知能検査で測られた値ではなく、「賢さをなんとなく数字にした」ものとみられます。
数値そのものより、どんな能力が研究で確かめられているかを見るほうが実態に近づけます。IQの数値がどう決まるのかは、測り方の記事でくわしく解説しています。
関連記事:IQの測り方|どうやって数値が決まる?計算方法と測定の種類を解説
一方で「賢い動物の順位」という見方なら、タコは無脊椎動物の代表格として上位の常連です。高い認知能力が研究で報告されている動物と並べると、次のようになります。
| 動物 | 報告されている主な能力 |
|---|---|
| タコ | 道具の使用、瓶のフタ開け、脱走、擬態(無脊椎動物で随一) |
| チンパンジー | 道具の製作、瞬間記憶、複雑な社会性 |
| イルカ | 鏡に映った自分の認識、音による高度な意思疎通 |
| カラスのなかま | 道具の使用、先を見越した問題解決 |
IQという数字で順位をつけるのは適切ではありませんが、タコが賢い動物の上位にいることは確かだといえます。なお、生き物のIQをめぐる俗説は、チンパンジーやサボテンの例でもくわしく検証しています。
関連記事:チンパンジーのIQは人間より上?人間との比較を研究で検証
関連記事:サボテンのIQは2〜3って本当?論文・出典から検証して解説
タコはココナッツの殻を道具に使う

タコの高い知能を象徴するのが、ココナッツの殻を道具として使う行動です。これは無脊椎動物で初めて確認された道具使用として、大きな注目を集めました。
報告したのはオーストラリアの研究チームで、成果は査読を経た学術論文として国際誌に発表されています。出どころ不明のネットの数値とは性質が異なります。
観察されたのはメジロダコという種です。インドネシアの海で20個体以上が調べられ、割れたココナッツの殻を体の下に抱え、最大で20メートルほど運ぶ姿が確認されました。
なぜ「道具を使っている」といえるのか
ポイントは、その場ではなく「あとで使うため」に殻を運んでいる点です。タコは殻を運んでいる最中は守られておらず、移動の手間というコストだけを払っています。
それでも持ち運ぶのは、敵に襲われたときに2枚を組み合わせて中に隠れるためです。先のことを見越して物を用意する行動であり、単なる本能とは区別されます。
こうした「将来に備えて道具を準備する」ふるまいは、道具使用のなかでも高度なものとされ、これまで一部の類人猿や鳥でしか知られていませんでした。
瓶のフタ開けや脱走に見るタコの賢さ

道具以外にも、タコには高い知能を示す行動がいくつも報告されています。代表的な3つを順にみていきます。
瓶のフタを回して開ける
タコは、ねじ式の瓶のフタを回して開け、中のエサを取り出すことができます。透明な瓶ごしに獲物を確認し、吸盤でフタをつかんで回す動作です。
初めは時間がかかっても、数回の試行で手早く開けられるようになるとされています。これは「どうすれば開くか」という因果関係を理解し、試行錯誤から学習していることを示します。
一度覚えたやり方を記憶して次に活かす力も確認されており、その場かぎりの反応ではないと考えられています。
水槽から脱走する
タコは脱走の名人としても知られています。2016年にはニュージーランドの国立水族館で、「インキー」という名のタコが脱走し、世界的な話題になりました。
インキーは水槽上部のわずかなすき間から抜け出し、ぬれた床をはい進みました。そして直径15センチほどの排水管を通り抜け、海へ帰ったとされています。
骨がなく体を自在に変えられることに加え、逃げ道を見つける観察力があってこその脱出劇でした。館長も「とても頭が良く好奇心旺盛」と語っています。
人の顔を見分け、体の色を変える
タコには個体を見分ける力もあるとされ、実験では特定の人物の顔を区別したと報告されています。エサをくれる人とそうでない人で、反応を変えたという観察もあります。
さらにタコは、まわりに合わせて体の色や質感を一瞬で変える擬態の達人です。岩や海藻に化けて身を隠したり、危険を感じて警告の色を出したりします。
状況に応じてふるまいを切り替えるこうした行動も、高い情報処理能力のあらわれと考えられています。
タコの脳は9個ある?腕で考える分散型神経系

タコの賢さを語るうえで欠かせないのが、人間とはまったく違う神経系です。「脳が9個ある」と表現されることもあります。
タコの神経細胞はおよそ5億個。そのうち約3分の2が、8本の腕に分かれて存在しているとされています。中央の脳だけでなく、腕にもそれぞれ神経の固まりがあるのです。
このため、それぞれの腕が半ば独立して判断し、動くことができると考えられています。中央の脳が一つひとつ指示を出さなくても、腕が自分で物に触れて形を確かめるようなイメージです。
つまりタコは、全身に「考える場所」が分散した生き物だといえます。脳に知能が集中する人間とは設計図そのものが異なります。
これこそが、タコの賢さを人間と同じものさしで測れない理由です。「人間より上か下か」ではなく、まったく別の進化が生んだ知能のかたちと捉えるのが実態に近いといえます。
まとめ
タコのIQを人間と同じ数値で比べることはできませんが、道具を使い、瓶のフタを開け、脱走までするなど、無脊椎動物とは思えない高い知能を持っています。
- ココナッツの殻を運ぶ道具使用は、無脊椎動物で初めて確認された(出典:学術論文)
- 瓶のフタ開け・脱走・個体識別・擬態など高い知能を示す行動が多数報告
- 「IQ40〜50」は出典不明の俗説。神経の約3分の2が腕にある独自の神経系を持つ
知能は一つのものさしで上下を決められるものではありません。自分のIQの位置が気になった方は、無料のIQテストもあわせてご利用ください。
タコのココナッツの殻を運ぶ道具使用は、Finn, Tregenza & Norman (2009)「Defensive tool use in a coconut-carrying octopus」Current Biology 19(23)(DOI)を参照しました。神経細胞や神経系の構造については東洋経済オンライン「タコの脳はいったい何個あるのか」などの解説記事を参照しています。IQが人間の認知能力を数値化した指標であることは東京大学の知能指数に関する解説ページを参照しました。動物の知能は研究段階のものであり、IQという数値で種を超えて順位づけできるものではありません。

